私が高校2年生になった昭和60年8月のある暑い日のこと、私はテレビのニュースを見ながら西瓜を食べていました。
すると突然、父が「ずいぶん前の話だけどな」と前置きして、2〜3年前に起きたある事件の話をしてくれたのです。
ある晩のこと、父は一人で小竹浜の手前まで釣りに出かけました。
このあたりは山の中腹を道路が走っているので空き地に車を駐め、真っ暗な森の中を下の磯まで歩いて降ります。
もちろん人家など一軒もなく寂しいところです。
その夜はなにも釣れずに帰ってくる途中、同じように道端にとまっている車を父は見つけました。
「俺と同じように魚釣りをしているやつがいるのか。珍しいな」と思いながら家路についたそうです。
その翌日、地元紙を読んでいた父は一つの記事に目を留めました。
それは『昨夜、小竹浜で自殺者騒ぎがあり。
魚釣りをしていた二人が磯の上を歩いている女を発見し、もしや身投げかと小竹浜の集落へ駆け込んだ。
住民総出で捜索したがそのような形跡はどこにもなかった』という内容で、
父は「あの辺りに魚釣りに、まして夜に行くのは俺くらいかと思っていたが…。そうすると駆け込んだのは昨夜とまってた車の奴だな」と思い当たったそうです。
それからしばらくすると、その辺りで奇妙な噂がささやかれはじめました。
佐須から小竹へ行く途中、尾崎という地名の岬を回ります。
そこに小さな石段があり、石段を昇りきると小さな神社があります。
誰かがその目撃事件のあと、この神社の扉を開けて中をのぞくと、古い草履と古くて文字の判読ができないほど傷んだ遺書めいたものが置いてあるのを発見したそうです。
つまり釣り人が見たものは、だいぶ昔に身投げをした女の幽霊であったのだという内容でした。
私も父も幽霊を見たことなどなく霊感もないため、もっとも身近に感じた怖い話でした。
誰かにこの話を伝えたいと思っているうちに20年あまりの歳月が過ぎてしまいました。
私は今年9月に石巻に帰省する予定なので、そのときに市の図書館へ行って地元紙の記事を探してみようと思っています。
おそらく『石巻日日新聞』か『河北新報』でしょう。
石巻の噂といえば、牧山トンネルに出るなどとネットで紹介されていますが、私が子供の頃は、そのような話を聞いたことはありませんでした。
何かの間違いだと思います。
雄勝トンネルもそうですが、石巻で少女が惨殺され遺体が放置された事件や一家虐殺事件などは起きていません。
07/15[さっちゃん@]
地元の話は身近に感じます。記事が見つかるといいですね。
雑誌『ほんとにあった怖い話』ファンページ「ほん怖本舗」。情報交換しましょ。
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