とある解体屋に事故車が一台入ってきました。
あるメーカーの高級車Cです。
車体はボンネットが途中まで二つに裂けて全体がひしゃげ、さながら「クワガタ」の様な形に変形していたそうです。
何でも猛スピードで電柱に正面衝突したらしく、一目見て「死人が出た」と分かったそうです。
しかし意外にも、車内には殆ど血痕がありませんでした。
解体屋の従業員は、何一つ部品が使い物にならないその車を、工場から車で5分程離れた場所にある別のヤードに運んで、そこに車を降ろすとさっさと引き上げました。
それから3日ほど経ったある日、作業を終えようとしていた解体屋の従業員は、工具箱が一つ無い事に気付きました。
「ちぇ、あっちのヤードに忘れてきたか…」
日もすっかり沈んで暗くなってはいましたが、工具箱を置き忘れた場所はハッキリ覚えていたので、会社のライトバンに乗り込むと、例の事故車が放置してある別ヤードに向かいました。
ヘッドライトの明かりだけを頼りに、ヤードの中で工具箱を見つけると、それを車に積んで乗り込みました。
そして、とっとと引き上げようとライトバンを発進させた時、見てしまったのです。
それは真っ暗闇の中に、白くボウっと浮かび上がった、血塗れの若い女性の姿でした。
その女性は叫んでいました。
「私の!私の赤ちゃんは何処!」
従業員は死に物狂いで車を発進させると、無我夢中で工場まで戻りました。
それから日の落ちた後、そのヤードへ行った者が全員、しかも同伴した同業者までその女性を見ることとなったのです。
そして、不吉な車は他の使い物にならない事故車を差し置いて、真っ先にスクラップにされました。
その車に乗っていたのは、20代前半の若夫婦とその赤ん坊と、奥さんと同期の友人でした。
ある晩、田舎道を猛スピードでドライブしていました。
旦那が運転し、友人は助手席、奥さんは赤ちゃんと一緒に後部座席に…。
まだ20代前半と若かったため、また、真夜中で往来する車も殆どなかったので、ついつい調子にのってしまったのでしょうか。
その場の勢いと夜のためスピードの目測を誤り、ゆるいカーブを曲がりきれずに、道路脇の電柱に正面衝突してしまったのです。
赤ちゃんを含む4人全員がフロントガラスから外に放り出され、全員即死でした。
そう、叫ぶ女性の幽霊は、後部座席で赤ちゃんを抱いていた若い奥さんでした。
彼女は死してなお、自分の抱いていたはずの赤ん坊を捜していたのです。
その車は、とうの昔にその解体屋の別ヤードから消え失せましたが、今でも時々、その女性の姿を見る事があるそうです。
それ以来、その解体屋では、日が落ちてからそこへ出入りする事は、タブーとなりました。
02/01[北海道在住]
自分が気を付けていても事故に巻き込まれることがありますが、(霊がいるとしたならば)死してなお我が子を探し続ける母親の気持ちを思うと、何ともやりきれないです。
雑誌『ほんとにあった怖い話』ファンページ「ほん怖本舗」。情報交換しましょ。
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