1995年7月15日午前9時半頃、おいらと同じ職場のA君は、外のお仕事に出るべく駐車場へ行きました。
車は5ドアの業務用バンですが、最低限装備で、効かないクーラーはついてるのに、驚いたことに助手席のサンバイザーすらないんですよ。
あれってオプションだったんですか? ま、それはいいとして。
パワステ、パワーウィンドウ、オートロックとか、オートマなんてぇのは、夢のまた夢という車でした。
その日は朝から日差しが強く、案の定、車内はサウナ状態。
このままじゃあいくらなんでも乗れないってんで、取りあえず5つのドア全部を全開にし、風通しを良くしました。
そして、エンジンかけてエアコンをフル回転し、しばらく放置しました。
2,3分経ったんでドアは閉めました。
ロックするのは目的地で降りる時でいいやーって、そん時思ったことを覚えてます。
だからロックは開けっ放しでした。
車の中が若干冷えるまで、車の脇で二人でタバコを吸いました。
吸い終わり、そんじゃあボチボチって運転席のドアを開けようと思ったんですよ。
そしたらね、開かないんです。
ロックしちゃってんですよ。あれえ?と思い、助手席側のドアの内側を見ると、ロックしてんです。
??と思い、助手席の後ろのドアも確かめると、やっぱりロックしてんですよ。
うっひゃあ、と二人で5つのドア全部開けてみたわけ。
全部ロックしちゃったんです。全部のドア3回くらい確かめたんですけどね。開かないんだな、これが。
目で確かめても、確かに全部ロックしちゃってんです。
いきなり締め出し食らっちゃったわけです。
不気味ってぇより、困っちゃいましてね。
これから仕事行こうかって時に。訳わかんないですけど。
でも、総務課に合い鍵あるのを知ってたのでAを見張りに残し、合い鍵を取ってきました。
Aは車のそばで待ってました。その間、1分もかかってないと思います。
それで、「やれやれ」か何か言って開けようと思いキーを入れたら、何か変です。
ドアが開いてるんです、今度は。ロックしてないの。
あれま!?と思い、さっきと同じように助手席とその後ろのドアを見たら、開いてるんですよ。
「おい、開いてんぞ」。「えぇっ!?」と言って、二人でさっきと同じように5つのドア確かめたら全部開いてるんです。今度は。
虫の知らせか?てんで、二人とも嫁さんに電話したんですけど何もなかったです。
変な感じがしたんですけど、その車を使うしかないんで安全運転でいきました。
で、その日は事故もありませんでした。
その晩、心当たりに確認しましたが、何もありません。
後で周りのメンバーに聞いてみたが、別に過去に事故を起こしたとか、中古で買った車だったとかではありませんでした。
Aは車には詳しいんですが「オートロックなら、温度変化で起こる可能性もあるんだろうけど、この車はねぇ」と解説してくれました。
結局その現象は、そん時だけで終わりました。
なお、Aによると「死んだ俺の親父が事故に気を付けろって警告したのかなぁ」とのこと。一応、新盆ですし。
ただ、今思うのは、ひとりでにロックが開いたり閉まったりするとこ、見たかったなぁって思ってます。
あ、その車はもう廃車になっちゃいました。
[たけち]
ワンテンポ遅れて閉まることはありますが、オートではないから…。
一応僕は科学という宗教に従事している者なんですぅ。
だからそういったものを科学的に分析して、更には否定しなければいけない立場なのですが、これだけ体験してしまったら迂闊に反論できませんね。
だから今のところは達観するだけで敢えて分析は控えています。
因みに僕の小話の中にも、科学的な仮説を立てようと思えば立てられなくもない話がありますね。
しかしそれは、かなり苦しいものになります。仮説が立てれるならまだしも、中には仮説すら立てられないものがあり、それについては…といったところですか。
つい最近こんなことがありました。
前回顔だけの女の話を掲載していただきました。
あの顔はもう出なくなりましたが、近頃はいろんなのに付きまとわれています。
例えば、黒い影のおっさんA(エース)。
本当は性別は判らないのですが、とにかく黒い影なんです。
ただ何するでもなく僕にひたすらついてきます。
もちろん地面にいるわけではありません。地面にいるなら「自分の影やんけぇ」と突っ込みが入れられるのですが。そいつは空気中に立っています。
何かを訴えかけるでもなく、危害を加えるでもなく、僕の近くに常に立っています。
まあ、危害を加えないなら近くにいてもいいかなと思い「ヒラヒラしてろよ」とその影に言いました。
するとその影はヒラヒラするのです。まあそれは偶然だったのですが。
そんなある日、僕は兄の車に再び乗り、ある場所へ行くことになりました。
「影よ。もう君と会うこともないだろう」と影に涙ながらに別れを言って、スキップして車に乗り込みました。
僕は助手席に乗り、窓の外の流れを見ていました。時々は影のことを思い返していました。
ああ、やっと煩わしいものがいなくなるという、とても悲しい思いに囚われながら、ふとミラーを見ました。
あの影がいました。驚いて後ろを見ました。すると、あの影が走っているのです。
本当に影だけなのですが確かに走っているのが分かりました。しかも凄いスピードで。
僕についてくるためにあんなに必死になるなんて。「あ、あんた。ホンマにエースや。あんたはエースやぁ」。
僕は感動のあまり叫びました。そこまでして僕のことを…。
でもあれだけしつこかった影もM君がちょっと祓ってくれると嘘のようにいなくなりました。
うーん、それからやたら邪魔する生首D(意味はない)というのもいます。
僕が友達と喋っていると僕に喋りかけてくるんです。誰だ?と思って振り返ると目と鼻の間というやつですか、いるんですよ。生首が。
そいつは普通の女の顔です。身体が無いという点を除けば普通なのです。
出た当初は恐怖したものの、ニンゲンって怖いですね。だんだん慣れてくるんです。
そいつは影男と同じように何するでもなく、ただひたすら僕の邪魔をします。
例えば、さっきも書いたとおり友達との会話に割り込んだり、テレビの字幕を読んでみたり、書き物をしていると机の上に座り(?)込んで僕の顔をジッとみたり。
とても煩わしかったのでまたM君に祓って貰おうと思いました。しかし、彼は嫌がります。
「何で?」と聞くと、「そいつ首だけじゃない。お前の後ろに首のない身体がいて俺が祓おうとすると俺の前にやってきて俺の首を絞めようとするんだ」と言われました。
仕方なしに僕は生首に悩まされる日々を送りました。
でも、あれだけしつこかったのに、8月に入ると忽然と消えてしまったんです。
とゆーことで妖怪ネタ(ネタじゃないっつーの)はまだまだありますが、今日はここらへんで。
[Anubis]
分析するのなら、じっくり時間をかけるべきですね。
私は既に25年、費やしてますよ。そして今、皆様の御協力を得て、心の奥底にしまい込まれた話を収集している最中です。
学生当時はよく金縛りにあっていて、その日も夜中にあってしまいました。
「あーまた来たなーいいかげんにしてー」と思っていました。
体は横向きに寝ていました。つまり右頬は枕にくっついて、左頬は天井の方を向いている感じです。
目を開けると何か見てしまいそうで、いつもは目を開けないようにしているのですが、なんだかその日に限って、薄目を開けてしまったのです。
そして目の前に見えたのは、床から20cmくらいで浮いている足袋を履いた2本の足でした。
しかもその足が、吊られた人のようにダラーンと力無く垂れ下がっている感じなのです。
そんな足だったので「これは上を見上げたらイカン。きっと首を吊っているに違いない」と何故か確信してしまったのです。
私は、そのまま固く目を閉じ金縛りが解けるのを待ちました。
次の日の夜も金縛りにあった私は、布団の周りをぐるぐる歩き回る足音を聞きました。
また薄目を開けてしまったのですが、昨日と同じ様な白い足袋と、和服を着たお爺さんのような人が歩き回っていました。
同じ様な金縛りに遭う夜が何日も続き、これはただ事ではないかもと思い始めた頃、家の神棚の換えたばかりのお榊があっとゆう間に枯れる出来事も起きました。
家の者もおかしいねぇと首を傾げていました。
思い切って母と祖母に「夜になると和服の人やお爺さんが出てくる」と言うと、祖母は真っ青になり、それは祖父の父親だと言うのです。
祖父の父親は首を吊って自殺したそうです。
何故、急に出てきたかというと、それは私の母に原因があったようです。
母が仏壇にあったその人の写真(おじいさんの写真はそれしか残っていなかった)を、写真立てが壊れたので写真が入ったまま捨ててしまったそうなのです。
普通のゴミと一緒に。そりゃー怒りますよね。
それから家族で仏壇に手をあわせて謝りました。
それから、おじいさんの金縛りは無くなりました。
でも何故母でなく私に怖い思いをさせたのでしょうか。ひどい。
[たま]
何かを訴える話。あるんですねぇ(しみじみ)。
学生の頃、テント山行で、草っ原に幕営した夜のことです。
その場所でテントを張ったのは彼らだけ。
一つのテントに4,5人で寝て、彼は一番出入口に近い所で眠ったそうです。
夜中に目が覚めると、テントから少し離れた草っ原で、何かが動くガサガサという音がする。
『何か』は複数で、その複数の『何か』が一点に集まるような気配らしい。
そして、その一点に集まった『何か』は、テントの方へ近づいて来る。
動物ではなく人のようだが、こんな夜中、このような場所に人がいるわけがない。
自分は、恐ろしくて声を出せない。
そいつは、あろうことか自分達のいるテントの外、自分の寝ている場所と薄いテントが隔てた所に、立ち止まった。
そして、そこに置いてあった水筒のひとつを取り上げて飲み始めた。
ふと気付くと、テントの中の全員が起きている。
声をひそめて、最も年長の者に「外で誰かが水を飲んでますね」と言うと、リーダー格の者がうなずき、正体を見ようということになった。
掛け声と共に出口をバッと開けると、そこには誰もいない。
置いてあった水筒もそのままで、中身は減っていなかったそうです。
この話、バラバラの物がひとつに集まっていった点が一層不思議です。
[エム@cac2d2aea]
元は一つの物体だとすると、それは…。
兄はその日珍しく安全運転をしていたのでバイクがすぐに追い付き、追い越そうとしました。
そのバイクの後ろには女の人が乗っていて、僕の方を見てるんです。
僕に気があるのかなとか思ったんですが、すぐにバイクが追い抜いたので顔までははっきりと見えませんでした。
気を取り直して外に目を向けていると、「あのバイク、危ない運転するなぁ」という兄のイラついた声が聞こえてきました。
うん?と思い僕は前方に目をやりました。すると、さっき見たバイクがいました。
後席から僕を見ていた女の人の何かがおかしいんですよ。
顔はこっちを向いています。後ろ向きに乗っているのかなと思ったんですが、違うんです。
そいつは顔だけが完全にこっちを向いていたんです。まるで首を切り取って後ろ向きに付け替えたかのように…。
うわっと目をそらしました。そしてもう一度前を見ると、バイクは忽然と姿を消していました。
おお、いよいよ出たのか、昼間なのにと僕は思い「今、バイクがいたよなぁ」と兄に聞きました。
しかし「ああ、いたぞ。あのやたら危ない運転してた奴だろ。さっきそこの角曲がってったぞ」と言うんです。
えっ、じゃあさっきのは単なる勘違いだったのか?
まあ、こんな昼間にバイクの幽霊が出るワケねーかなと、そのことは忘れることに決めました。
目的地に着きました。僕は一服しようと車を降り、自販機でジュースを買いました。
そして車の流れをぼんやり眺めていました。
すると向こう側の歩道に若い人達が(僕も若いですが)数人たむろしていたのですが、その中の一人の女の人がこっちを見ているんです。
今日はもてもてだなー、と自惚れてその人を見てみると何かおかしいんです。
あれっ、と思いよく見てみるとやっぱり何かおかしい。
何がおかしいんだろうと、失礼だとは思ったけど、その人をよく見たんです。
すると、また顔だけがこっちを向いてる。
うわっ。周りにいた人達はそれに気付いていません。
僕だけにしか見えないのか、あの人達も仲間なのか。
とにかく怖かったんでさっさと車に乗り込みました。
それから、帰り道でも同じ様なモノを見たんです。
前の車の後部座席の女の人が、こっちを向いてるからなんかなーと思いよく見ると、また顔だけがこっちを向いてるぅ。
そんな事で、散々な一日だったので、シャワーでも浴びて寝ることにしました。
そして浴び終わり、自室に戻りました。
すわぁて惰眠でもボリボリと貪るかのぉと布団に潜り込もうとした時です。
視界の隅に何かチラッと白いモノが映りました。
??と思い、そっちに顔を向けた瞬間固まってしまいました。
というのも窓ガラスを隔てた所はベランダですが、その柵の向こうに顔が浮かんでいるんです。
ここは13階です。「をいをいハニー、そんな所に浮かんでいたら危ないじゃないか」錯乱していました。
錯乱しながらも一つ気付いたんです。今日一日見てたのはこいつだって…。
そうなんですよ、僕を見てた女の人ってみんな同じ顔だったんです。顔だけがこっちを向いていたんじゃなく、顔しかなかったんです。
僕は分かった瞬間、サッとカーテンを閉めて無かったことにしました。
それから深い眠りへと…。
[Anubis]
好みの顔でしたか? これだけ話が多いと、いよいよ『Anubisの小部屋』てのが…。
腕時計にまつわる話なんですが、高校生の頃、うちの箪笥の中から古ぼけた腕時計が出てきました。
その当時は古着が流行っていて、それにつられてアンティーク小物なんぞも人気を博していたので、一遍で気に入りました。
ネジを巻いてみるとちゃんと動くんで、こりは使えるなと思い、親に「これをおいらにくれい!」と言いました。
親「いいけど、動かないよ」
おいら「そんなことはないよ、ほら」
親は絶句状態。おいらは、???
聞けば、その時計は親父が就職した時におじいさん(親父の親父ね)から、お祝いとしてもらった物なんだそうです。
が、ある日を境にウンともスンとも言わなくなった。
ネジは何度も巻いてみたし、どこをどういじっても動かない。
せっかく貰った物なのにぃ!と地団太踏んで悔しがっていると。
テレビで超能力者のユリ・ゲラーなる男が「私と一緒に止まってしまった時計を動かしましょう」なんて言ってるもんだから、ついその気になり一緒に念じてみた。
しかし、一向に動かない。ま、これはね、しょうがないっすね。
もうだめだね。でも、お祝いとして貰った物だから捨てちゃうのも、といって箪笥にしまっておいたそうな。
それがある日何の気なしに見つけたおいらが手に取った途端に動いちゃったと、こういう話です。
つうことは、おいらの方がユリ・ゲラーより強力ってことですかね(笑)。
そんなエピソードもあり、結構気に入り暫くは使っていたけど、ある日酔っ払って尻餅をついたら、運悪く尻のポッケに入れてたのであえなく粉砕。
それでも捨てないで保管しておいたんだけど、何時の間にか無くなってしまいました。
その時計を贈ったおじいさんも今は亡くなっています。
今でもこの腕時計を思い出すと「すまん」という気持ちで一杯です。
[たけち@a]
動け動け、ううーん てか(^^;
この間「稲川淳二の怖い話」の1と2をビデオ屋で借りてきて、ダビングしたんです。
その後に「桜金蔵のたのしい怪談」をダビングしたときのことです。
何日か経ってからビデオテープを再生すると、三つの話の内容が、バラバラに再生されました。
別に古いテープではないのですが、一番初めの話が、一番最後にも出てきたときにはパニックになりそうでした。
あのビデオには、何か因縁でもあるのでしょうか?
[i.t@highway]
媒体に記録されたモノ。気味が悪いですね。
彼女の友達に、霊感の強い姉妹がいるんです。妹より姉の方が霊感が強いのです。
ある日、何度閉めてもちゃんと閉まらないドアを見て、妹が「ここのドア、ちゃんと閉まらないよ」と姉に言ったそうです。
そしたら姉が「ああ、そこ、男の子がいてね。何回閉めても、開けては覗いてるのよ」と、サラッと言ったのです。
そーゆー会話を、そんな簡単にしないでほしいわ…。怖いやん(笑)
[綾小路ささめ@m]
姉妹にとっては日常会話なのかな。
僕はある日、図書館へ行きました。
ちょうど今ぐらいの季節で、カンカン照りの太陽に焼き付けられ、いい加減ダウンしかけていたのです。
だから冷房の利いた図書館へ涼みにいこうと思い立ったんです。まあ、僕が生来の本好きでもあったわけですが。
探していた本があったので、僕は受付で訊きました。
「ああ、その本なら2階のA-12にありますよ」と教えてくれたので、僕はさっそく受付に隣接しているエレベーターに乗り込みました。
んー、がたんがたん、ぐぁあん。上の階へ上がっていきます。
僕はというと、ボーっと階数の電光掲示を眺めていました。
しかし、しばらくたっても2階に着かないんです。
故障か?と思い少し焦りましたが、しばらくして階数が2に変わりドアが開きました。
僕はホッと胸を撫で下ろしてエレベーターを降りました。
そして、僕は本を探し始めました。でも、何か変なんです。
空気が重いというか、薄闇いというか。
2階ってこんなんだったっけ?
僕は首を傾げて本棚に並んでいる書物の背表紙に目をやりました。
すると驚いたことにそれらは、今では廃版になっているようなものや内容のために絶版になった本の山でした。
何でここにと思ったんですが取り敢えず借りたい本を先に探そうと思いました。
お目当ての本を見つけた僕は、こんだけ珍しい本が色々あるならもう一つ何か借りるかと思い、適当なのを選びました。
そしてまたエレベーターに乗り込んだんです。
受付で本を手渡すと、係の人が怪訝そうな顔をします。
「この本はどこにありましたか?」と聞いてくるんです。
僕は「2階にありましたよ」と言いました。
「おかしいな、これはうちの本じゃないし、こっちのはシールが付いていない」って言います。
というのも、ここの本にはカバーがしてあり、更に番号の書き込まれたシールが背表紙に貼ってあるのです。
で、その人は「ちょっと待ってください」と言うと、奥に引っ込み、また戻ってきました。
手にはちゃんとカバーのされた本があります。
「ではこれを」と、紙に何か書き込み手続きは終了しました。
数日後、僕は本を返しにまた図書館へ行きました。
受付で手続きをし、本を元の所へ戻そうと思い、またエレベーターに乗り込みました。
でも今度は早く2階についちゃったんです。
おかしいな、前はもっとかかったのにと思いましたが、ドアがスーッと開いたので降りたんです。
でも、僕の目の前に広がった光景は、あのどんよりとした重苦しい空気の部屋ではなく、パッと開けた広く明るい部屋でした。
しかも、本棚に並んでいる本が違います。
「書籍の整理でもしたんですか?」僕は近くにいた職員に聞いてみました。
「いいえ、しておりませんよ」彼はそう言います。
取り敢えず僕は本を適当に戻しておくことにしました。
図書館は3階までしかありません。しかも、3階は事務所です。
僕は一体どこに行ってたんでしょう。そして、あの本はどこのものだったんでしょうかね?
[Anubis]
部屋の中はカビ臭くなかったですか?
ふと見ると、前方10mほどの所、道の脇に小さなポンプ小屋が建っており、その陰に人のシルエットが見え隠れしている。
小さな人の影。人がいるという安心感と、ちょっとだけ不安が入り交じった。
この道を通らなければ家へは帰れない。
歩き、小屋のすぐ手前まで来たが、相変わらず黒い人影が小屋に隠れるように揺れており、その姿は暗闇でシルエットでしかない。
僕は少しうつむいて小屋の前を通り過ぎようとした。
「タカシだろ? おかえり。迎えに来たよ」。
確か、そんな言葉が暗闇から届いてきた。
聞き覚えのある声。確かに僕の名を呼んでいた。
「だれ?」怖々と尋ねる僕に、その影は確かにこう言った。
「おばあちゃんだよ。今日は帰りが遅くなるっていうから、迎えに来たんだ」。
確かに、その日は帰るのが遅くなるという事で、学校の先生から両親に電話があったのかもしれない。
それで親がおばあちゃんに頼んで、僕の迎えを頼んだのかもしれない。
おばあちゃんは歩くのが遅いから、学校まで迎えに来るつもりが、ここまでしか来れなかったのかもしれない。
おばあちゃんは散歩が好きで、この辺りまでだって幾度となく来てるはず…。
ふと、おばあちゃんの、その黒いシルエットの手元に目をやった。
僕より背が小さくて、ちょっと小太りのおばあちゃん。
でも、こんなに小さかったかな?
あれ? よく見たら街灯がすぐそばにあり、自分の姿はそれに照らされているのに、どうしておばあちゃんは真っ黒なんだろう?
どうしておばあちゃんはその手に、鎌のようなものを握り締めているんだろう…?
僕は暗い夜道を走った。
必死に走り続けて、背後からおばあちゃんが、僕の名を呼ぶのが聞こえなくなるまで走った。
…まだ、死神には用は無い。
家に辿り着くとすぐ、母からの言葉が飛んできた。「あれ、おばあちゃんは一緒じゃなかったの?」。
家におばあちゃんはいなかった。僕を迎えに出たらしい。
しばらくして、おばあちゃんが一人で家に帰ってきた。
その手に鎌を持ち「帰り道の山で山菜取ってこようと思ったんだけど、暗くてダメだ。…タカシはもう帰ってきてるのかい?」。
「行き違いになったんだねえ。道が暗かったから」と母が答えた。
全ての恐怖がどこかへ飛んで、胸を撫で下ろした僕が母に説明する。
「違うよ。途中の道でおばあちゃんに会ったんだけど、暗くてよく見えなかったから、違う人かと思って帰ってきちゃったんだ」。
名前を呼んでくれたのに、そのまま走って帰ってきてしまった事を、おばあちゃんに詫びようとした。
その時、おばあちゃんが言った。
「何言ってんだい。学校の校門の所で会って、一緒にそこまで帰ってきたじゃないか。
山菜取ろうと思って、暗い山に入ろうとした途端に走り出して。小学生にもなって、まだ暗いのが怖いのかい?」。
とっても奇妙な、夜でした。
何かが、ちょっとだけ狂ってしまったような…。
[タイマイ@ofd]
それぞれ誰に会っていたのでしょうか。
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